医業類似行為問題

『医業とは』

医師でない者の医業禁止
「医師でなければ、医業をなしてはならない。」とされています。(医師法第17条)

『医業類似行為(いぎょうるいじこうい)とは』

「医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ、
人体に危害を及ぼし又は危害を及ぼす恐れのある行為」である医行為を、

「業、すなわち反復継続する意志を持って行うこと」である医業の周辺行為のことをいう。
医業とは、医師業務独占の範囲を示す概念としても使われていて、医師業務独占の範囲以外の行為になります。

『法律上の定義』

(あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律)
・第1条
医師以外のもので、あん摩、マッサージもしくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、
それぞれ、あん摩マッサージ指圧師免許、はり師免許またはきゆう師免許(以下免許という。)をうけなければならない。

・第12条
何人も、第一条に掲げるものを除く外、医業類似行為を業としてはならない。
ただし、柔道整復を業とする場合については、柔道整復師法(昭和四十五年法律第十九号)の定めるところによる。

*仙台高裁 昭和29年6月29日
「医業類似行為とは 疾病の治療又は保険の目的でする行為であって
医師・歯科医師・あん摩師・はり師・きゅう師又は柔道整復師等の法令で正式にその資格を認められた者がその業務としてする行為でないものをいう」

上記の法律や判例の定義だけでは少しわかりづらいので、解説させて頂きますと、
医業類似行為は、2種類に分類されることになります。

①法律に定められた免許を必要とするもの

③それ以外

になります。

①(免許を必要とするもの) あん摩マッサージ指圧師、鍼灸師、柔道整復師

あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律(あはき法)及び柔道整復師法しよって定められた資格に該当し、免許を必要とします。
あん摩、マッサージ、指圧、鍼、灸、柔道整復(ほねつぎ、整骨)が該当する事になります。

②(その他 無資格者) 整体師・カイロプラクティック・手技療法・電気療法・光線療法 等々
前述の①にも②にも該当しない、免許を要せず届け出もない医業類似行為です。
法律で定義されているわけではありませんが、

判例を元に
「疾病の治療又は保健の目的を持ってする行為であって、医師や法令で資格の認められた医業類似行為者が、その業としてする行為以外のもの」
とされています。

別の目線から分かりやすく言いますと、
医業類似行為は、法律に定められた『免許が必要なモノ』と、『それ以外のモノ』に大別されます。

○法律に定められた免許が必要なモノ

・柔道整復師(法律名:柔道整復師法)
・あん摩マッサージ指圧師、鍼灸師(法律名:あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師に関する法律)

○その他の医業類似行為(法的な資格制度がないもの)

・手技療法(整体、カイロプラクティック、オステオパシー等)
・電気療法
・光線療法
・温熱療法

という区分けになります。
要するに、法的な免許があるのか、それ以外なのか、のどちらかになります。

●整体、カイロプラクティック、マッサージ等での重症事例

その治療院や、施術院等に来院された方が、
健康に回復されていかれるのが一番喜ばしいことなのですが、
国民生活センターが報告書の中で、
やはり浮き彫りになってくるのが法的に資格制度がない、無資格業者の方による施術や治療による事故や重症事例です。

独立行政法人 国民生活センターHP
『手技による医業類似行為の危害−整体、カイロプラクティック、マッサージ等で重症事例も−』

健康を求めて来院されて言った方々が、余計に健康を害してしまう結果になってしまっている事実は大変残念なことです。

●無資格医業類似行為 = 無資格業者 の取り締まりについて

では、無資格業者が上記のような事実になっているのであれば、まずは無資格の業者は取り締まれば、国民にとってはいいのではないか…?という論議が出てきます。

ここの部分については、最高裁をはじめとする裁判例においていくつかの判断がなされてきました。

●最高裁判所判例 昭和35年1月27日 昭和29年(あ)第2990号

医業類似行為について、あはき法第12条において「何人も、第一条に掲げるものを除く外、医業類似行為を業としてはならない。ただし、柔道整復を業とする場合については、柔道整復師法(昭和四十五年法律第十九号)の定めるところによる。」と規定されています。
一方、以上の法律の趣旨について最高裁判所は、日本国憲法22条が保障している職業選択の自由との関係で、禁止の対象となる行為を次のとおり限定的に解釈しています。
すなわち、HS式無熱高周波療法を業として行った者を被告人とする刑事事件において、医業類似行為を業とした者が処罰されるのは、これらの業務行為が人の健康に害を及ぼす恐れがあるからであり、法律が医業類似行為を業とすることを禁止するのも、人の健康に害を及ぼす恐れのある業務行為に限局する趣旨と解しなければならないと判断した。つまり、有罪判決を出すためには、問題となる医業類似行為が人の健康に害を及ぼす恐れがあることを認定しなければならない。
ところで、医業類似行為を業とすることが公共の福祉に反するのは、かかる業務行為が人の健康に害を及ぼす虞があるからである。それ故前記法律が医業類似行為を業とすることを禁止処罰するのも人の健康に害を及ぼす虞のある業務行為に限局する趣旨と解しなければならないのであつて、このような禁止処罰は公共の福祉上必要であるから前記法律一二条、一四条は憲法二二条に反するものではない。
しかるに、原審弁護人の本件HS式無熱高周波療法はいささかも人体に危害を与えず、また保健衛生上なんら悪影響がないのであるから、これが施行を業とするのは少しも公共の福祉に反せず従って憲法二二条によって保障された職業選択の自由に属するとの控訴趣意に対し、原判決は被告人の業とした本件HS式無熱高周波療法が人の健康に害を及ぼす虞があるか否かの点についてはなんら判示するところがなく、ただ被告人が本件HS式無熱高周波療法を業として行った事実だけで前記法律一二条に違反したものと即断したことは、右法律の解釈を誤った違法があるか理由不備の違法があり、右の違法は判決に影響を及ぼすものと認められるので、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものというべきである。
この最高裁判決を受けて審理のために差し戻された仙台高等裁判所は、HS式無熱高周波療法は人の健康に害を及ぼす恐れのあるものと認定して有罪判決を出したため、被告人側から再度上告されたが、上告は棄却され有罪判決が確定しました。

この最高裁判例により、免許を必要としない医業類似行為は「当該医業類似行為の施術が医学的観点から少しでも人体に危害を及ぼすおそれがあれば、人の健康に害を及ぼす恐れがあるものとして禁止処罰の対象となる」が「実際に禁止処罰を行なうには、単に業として人に施術を行なったという事実を認定するだけでなく、その施術が人の健康に害を及ぼす恐れがあることの認定が必要」となりました。
そして、この最高裁判決を受けて、厚生省(現厚労省)が各都道府県知事あてに通知をだしています。

『—いわゆる無届医業類似行為に関する最高裁判所の判決について 昭和35年3月30日 医発第247号の1 各都道府県知事あて厚生省医務局長通知』
一、 この判決は、医業類似行為業、すなわち、手技、温熱、電気、光線、刺激等の療術行為について判示したものであって、あん摩、はり、きゅう及び柔道整復の業に関しては判断していないものであるから、あん摩、はり、きゅう及び柔道整復を無免許で業として行えば、その事実をもってあん摩師法等第一条及び第十四条第一号の規定により処罰の対象となるものであると解されること。従って、無免許あん摩師などの取締りの方針は、従来どおりであること。なお、無届の医業類似行為者の行う施術には医師法違反にわたるおそれのあるものもあるので注意すること。
二、 判決は、前項の医業類似行為について、禁止処罰の対象となるのは、人の健康に害を及ぼす恐れのある業務に限局されると判示し、実際に禁止処罰を行うには、単に業として人に施術を行ったという事実を認定するだけでなく、その施術が人の健康に害を及ぼす恐れがあることの認定が必要であるとしていること。なお、当該医業類似行為の施術が医学的観点から少しでも人体に危害を及ぼすおそれがあれば、人の健康に害を及ぼす恐れがあるものとして禁止処罰の対象となるものと解されること。
三、 判決は、第一項の医業類似行為業に関し、あん摩師法第十九条第一項に規定する届出医業類似行為業者については判示していないものであるから、これらの業者の当該業務に関する取り扱いは従来どおりであること。

また、同判決には「単に治療に使用する器具の物理的効果のみに着眼し、その有効無害であることを理由として、これを利用する医業類似の行為を業とすることを放置すべしとする見解には組し得ない」という裁判官の反対意見も付されており、近年、多様な形態の医業類似行為が増えている現状においては、厚労省(旧厚生省)の過去の通知を徹底するように通知が出されています。

『—医業類似行為に対する取扱いについて 平成三年六月二八日 医事第五八号 各都道府県衛生担当部(局)長あて厚生省健康政策局医事課長通知』
近時、多様な形態の医業類似行為又はこれと紛らわしい行為が見られるが、これらの行為に対する取扱いについては左記のとおりとするので、御了知いただくとともに、関係方面に対する周知・指導方よろしくお願いする。
医業類似行為に対する取扱いについて
(1) あん摩マッサージ指圧、はり、きゅう及び柔道整復について
(中略)
(2) あん摩マッサージ指圧、はり、きゅう及び柔道整復以外の医業類似行為について あん摩マッサージ指圧、はり、きゅう及び柔道整復以外の医業類似行為については、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律第十二条の二により同法公布の際引き続き三か月以上医業類似行為を業としていた者で、届出をした者でなければこれを行ってはならないものであること。したがって、これらの届出をしていない者については、昭和三十五年三月三十日付け医発第二四七号の一厚生省医務局長通知で示したとおり、当該医業類似行為の施術が医学的観点から人体に危害を及ぼすおそれがあれば禁止処罰の対象となるものであること。

判例・通達の新規開業への誤用
昭和33年の最高裁判決「人の健康に害を及ぼす虞…」の箇所だけが取り沙汰されて一人歩きしているが、この判決の要旨は「…であるから、免許制度が必要であり職業選択の自由には反しない」というものであり、この判決以降の医業類似行為の可否を述べるものではない。この判決に伴う医業類似行為者(=療術士)への経過措置の期限撤廃は既に行われており、それらは全て昭和23(1948)年2月以前に3カ月以上、業を行って届出をしていた者への経過措置であり、新規開業は許可されておらず、新規開業を行えば違法である。仮に、これらの仕事が乳幼児に出来たとしても60歳未満の療術業者はいないはずである。

術技の著しい類似性
療術行為で行われる全ての技法は、「揉む・叩く・擦る・押す・身体操作やその誘導」といった、あん摩・マッサージ・指圧で行われる一連の技術体系の範疇に含まれており、無資格者による手技療法は脱法行為である。

主張の矛盾
学術的に異なる医療ではないものに対して、一体どういった理由によって医療者からの差別や撲滅運動が行われるのか。社会通念上で考えれば、無資格者の行為は医業に類似した行為であり、国家資格などで社会的に担保されていない者が行えば有害であるから危険な行為であるがために、国民衛生を考えて撲滅運動が起きるのであり、その行為は医療とは区別される。